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2009.09.28(Mon)


「私、きっと八代くんのことが好きなんだと思うの」
そう言った彼女はとても綺麗で、大気に触れただけで壊れてしまいそうで、僕は怖かった。
「僕も、好きだよ」
そう言う僕の声は震えて、情けなかったけれど、喜びとうれしさであふれていた。
「じゃあ私達、両想いだね」
彼女はそう言って、とてもきれいに笑った。

今から丁度二年前の、三月のことだった。





彼は、きっと私のことなんて見てないのだろう。
そんなことはとうの昔に気付いていた。でも、気づいていないふりをしたかった。
でもやっぱり、気づいていたんだ。彼が私のことを好きになんてならないってことは。
認めてしまえば、私のこの恋は終わってしまうのだろう。だから私は、

「絶対に、みとめない」





父の急な転勤が決まったのは中学三年の二月だった。
僕はそのころ、クラスメイトの彼女に恋をしていた。一目ぼれ、だった。
きれいに笑うその表情と、こまめで他人にやさしい性格が好きだった。
でも、その急な転勤のせいで僕は引っ越すことになってしまった。彼女と同じ高校へ行くために必死で勉強していたすべてが、泡のようにはじけて消えていった。
光のさすことのない世界が僕の心にはあった。それは彼女にも、ともせない暗闇だった。
そもそも僕はそのころ、一度も彼女と話をしたことがなかったのだ。
かなうはずなど、なかった。
そんなことは知っていたけど、僕はとにかくその奈落のような現実から逃げたくて、でもそれは本当のことだって僕は気づいていて、だけど気付きたくなくて、もう、どうしようもなかった。
彼女との永遠の別れまで、あと一ヶ月をきっていた。





私が彼を好きになったのは、実をいうといつ頃だったか覚えていない。
高校の最初のクラスで同じクラスになって、それから一学期の途中の席替えで彼と隣の席になって、彼を横から見ていくうちに、彼への思いは興味から恋に変わっていたのだ。
顔は確かに、きれいなほうだと思う。背も高くてすらっとしていて、襟足まである男子にしては長い髪の毛が特徴的で、吸い込まれそうな漆黒の瞳が、どうしようもなく好きだった。
話してみたいと、思った。
だけど、臆病な私にそんなことができるはずもなかった。声すら、かけられずにあっという間に次の席替えが来て、彼は私の隣の席の人ではなくなってしまったのだ。
それからはずっと、片思いのまま。彼を見ていることしか、できなくなった。
あの憂いを帯びた瞳と眼があったことすら、ない。
一度でいい。彼が私を見てくれたいいのに。





卒業まであと三週間をきった時に、暗闇に覆われた僕の世界に突然光が差し込んだ。
卒業文集のクラスページを彼女と一緒にまとめることになったのだ。
偶然の、組み合わせだった。この時ばかりはうざったいと思っていたクラスの委員長に感謝した。
僕は誰もいない教室で、掃除をしているだろう彼女を待っていた。
みっともないと思うけど、すごくどきどきしていた。だって、今までずっと憧れていた彼女と話ができるかもしれない。そう思ったから。
何の話をしよう。どんな風に会話を切り出そう。彼女は、笑ってくれるかな。
僕を、見てくれるだろうか。
そのまま僕は、赤く染まる教室で彼女を待っていた。
胸の高鳴りは、止まりそうもなかった。





高校二年生になった。神様は私を見放さなかったのか、奇跡的に彼と同じクラスだった。
あの時の感動はきっと忘れないだろう。なぜだか、そう思う。
受験が受かったあの頃よりもうれしかったな。
でも彼が私を見てくれるわけではないのだ。重い現実が、のしかかるけど、
それでも私は彼が好きだった。
告白するつもりはなかった。というか、そんなこと出来るはずもなかった。
彼は私のことなんて知らない。知っていても、名前くらいだろう。
私と同じこの思いを彼が私に向けているわけじゃないのだから。
彼は高校二年生になっても、何も変わらなかった。
授業は基本的に真面目に受けて、でもたまに居眠りをして、
休み時間の合間をぬってはいつも読書をしていて、
お昼時間ではいつも友達とパンを食べてたまに笑ったりして、
掃除の時間では真面目に掃除をして、
放課後はいつも、図書室へ行って本を読んでいた。
ジャンルは様々だったけれど、ミステリーものが多かった。
私は本を読む彼が一番、本当に一番、好きだった。





がらり、と重い教室のドアは開いた瞬間、僕の心臓は止まってしまいそうなほど、どきどきしていた。
「遅くなってごめんね。掃除が長引いちゃって」
綺麗なソプラノだった。僕はどぎまぎとしながら、どうにか返事を返した。
「うん、大丈夫だよ」
声が、かすれた。音量もあまり出なかった。
感激して涙が出そうだった。彼女と、話すことができた。
たったそれだけのことで、僕はどうしようもなく幸せだった。
はじめて生きていたことに感謝をした。
「じゃ、はじめよっか。帰り、遅くなっちゃうもんね」
「うん、」
彼女はそう言って、僕の前の席の椅子に座って、がたがたと音をたてながら僕のほうへ向いた。
そのとき初めて、彼女と目が合った。すきとおったこげ茶の瞳だった。
彼女はそれから、僕の机を使ってクラスページの見出しを書いたり、今まであった体験についてなんかを書いていった。僕も同じ係のはずなのに、僕の出番はあんまりなかった。
彼女の優しさが、うれしくて、よろこばしくて、少し、悲しかった。
頼ってくれてもいいのに。そう言いかけて、僕は口をつぐんだ。
カリカリとシャーペンが紙をひっかく音が教室の中で響いていた。
僕は、彼女が書いている間、ずっと彼女を見ていた。
きっともう、このとき以上に彼女を見る機会はないだろうから。





もうすぐ、三年生になる。あと一ヶ月も、ない。
今度のクラス替えは、一緒になれるだろうか。彼と、一緒のクラスに、なれるだろうか。
このまま、時がとまってしまえばいいと、何度願っただろう。
彼は相変わらず、読書が好きなようだった。私はそんな彼が好きだった。
片思いをして、もう二年になりかけていた。
普通はもう諦めるのだと思う。でも私は、私のこの思いは、強くなっていく一方だった。
やっぱり彼がどうしようもなく、好きだった。
しゃべったことなんて一度もないのに、ただ席が一回同じになった、それだけのことで、
たったそれだけのことで、私は、こんなにも彼が好きだった。
捨てられるのなら、こんな思い、捨ててしまいたかった。
彼が私を見ていないことをもう、認めてしまったから。
そして彼が私ではない誰かを見ていることも、知っていた。
それが私の知らない人だということも。

もう、どうしようも、なかった。





彼女との時間も、もう終わりかけていた。
僕と彼女は結局あれから何もしゃべらず、沈黙が教室の中を支配していた。
僕は焦っていた。せっかく、せっかく彼女と二人きりなのに。せめて何かしゃべらないと。
でも、いざしゃべろうとすると、頭が真っ白になって何をしゃべっていいのかわからなかった。
教室の外はもう、暗くなっていた。冬だからっていうのも、あるんだろう。
僕が焦っていることなんて知らずに彼女はクラスページを書きあげてしまったらしい。
彼女が不意に口を開いた。
「八代くん、」
名前を呼ばれた。彼女は下を向いたままだった。
だから本来なら喜んでいるだろう場面なのに、僕は喜べなかった。
「なに」
かすれた声で返す。
「引っ越しちゃうって、ほんと?」
彼女は上を向かない。
「ほんと、だよ」
涙が、こぼれてしまいそうだった。
「・・・そっ、か」
そのあと、長い沈黙が教室を支配して、僕と彼女は黙ったままだった。
彼女はやっぱり上を向かなくて、僕もやっぱり涙がこぼれてしまいそうで、

もう、どうしようも、なかった。





いつものように、放課後図書室へ行った。
彼を見るために。
でも彼は、図書室にいなかった。いつも彼が座っている席は空っぽだった。
毎日、来てたのに。どうしたんだろう。
そう思う思考回路は、もう破たん寸前だった。
彼がいない。それだけのことで私の心は簡単にバランスを崩してしまう。
よろよろと、歩きながら私はなぜだか教室へ向かっていた。
理由なんてなかったけど、私は教室へ行きたかった。
そこに彼がいるような、気がしていたから。

がらり、重たいドアを開ける。
その瞬間、見たものは、

「やしろ、くん」

彼だった。





「八代くん」
彼女は、下を向いたまま長い沈黙を破った。
「なに」
僕の返答はさっきと同じまま。
「驚かないで聞いてね」
「うん」
僕は彼女を見たまま、目をそらすことができなかった。
彼女は、やっぱり顔をあげない。
「私、きっと八代くんのことが好きなんだと思うの」
「・・・え、」
一瞬、彼女の言っていることが何なのか、理解するのに時間がかかった。
かのじょが、ぼくを、すき?
夢じゃないのかと、本当に思った。これは僕が作り出した架空の現実なんじゃないかって。
でもこれは、まぎれもなく、現実だった。
何を言っていいのか、わからなかった。でも口は勝手に開いて、勝手に言葉を発していた。
「僕も、すきだよ」
声がさっき以上にかすれた。きっと音量もすごく小さかっただろう。
でも彼女は僕がその言葉を発した直後に、ぴくりと動いて、ゆっくりと顔をあげた。
彼女は、泣いていた。そして僕も、泣いていた。
「じゃあ、私たち、両想いだね」
彼女は綺麗に笑って、そう言った。





私が彼の名前を呼んだ瞬間に、彼はとてもびっくりしたような顔で私を見た。
そして彼は私を見て言った。初めて彼と目が合った瞬間だった。
「東さん」
アルトとテノールの中間の声。綺麗な声だった。
そんな声で、私は彼に名前を呼ばれた。それだけで、たったそれだけで、泣いてしまいそうだった。
「今日は図書室、行かないんだね」
私はなぜか、そんなことを口走っていた。
「今日は、俺にとって大切な日だから」
彼は、悲しそうに目を伏せて言った。
「そう、なんだ」
なんだか、壁を作られた気がしてならなかった。そうか、私はもう、これ以上あなたの心に入ることは許されないのか。そう考えてしまうと、どうしようもなく悲しくて、やっぱりこの恋は叶わないと再認識してしまって、もう、しんでしまいそうなほど、苦しかった。
「東さんこそ、今日は図書室に行かないんだね。いつもいるのに」
彼は私のそんな気持ちを知ってか知らずか、窓のほうをみていった。
「う、ん」
私が図書室に行っていたことを知っていたのがとても、驚きだった。
だから声がかすれて、うまく出なかった。
知らないと思っていた。知るはずないと思っていた。でも彼は、知っていた。
もしかしたら彼は、私の気持ちも、知っているのだろうか。
そう思った瞬間、彼が私に声をかけた。
「ねえ、東さん。今から暇?」
「ひ、暇だけど」
どきどきと、する。期待してしまう心を止められそうになかった。
「じゃあ少しだけ、俺の話を聞いてくれないかな」
「いい、よ」
私は、そのあとすぐに自分がいいよと言ったことを後悔することになる。

「中学三年のちょうど今頃、俺にはすごく好きな女の子がいたんだ」





あのあと、僕らは先生に出来上がったクラスページを提出し、家路についた。
どきどきして、うまく彼女としゃべることができなかった。
昇降口まで一緒に歩いた。ちらりと横を見ると、彼女の顔は赤かった。
きっと僕も、赤いんだろうな。
靴箱で靴を履き替えて、外へ出た。三月の寒い空気が僕と彼女を襲った。
「八代くん、わたし、こっちだから」
彼女は小さい声でそう言って、自分の変える方向を指さした。
その方向は僕の帰る道とは反対のほうだった。
「そっ、か。じゃあ、また、あした」
僕は下を向いて、言った。
「・・・うん」
彼女の小さな声が聞こえて、僕は顔をあげた。彼女はもう後ろ姿になっていた。
そんな彼女を見た瞬間に、僕は彼女に声をかけていた。
「在原さん!」
振り返らないと、思っていた。でも彼女はびっくりしたようにこっちを向いた。
「送って行くよ!」
僕はそう言って、彼女の元まで走った。自分でも、大胆な行動に出たと思った。
まるで自分ではないみたいだった。
「・・・・うん」
彼女は小さくうなずいて、笑った。
それから僕らは、手をつないで帰った。すごく、幸せだった。





「中学三年のちょうど今頃、俺にはすごく好きな女の子がいたんだ」
彼のその言葉を理解するまで、時間がかかった。
そして私のこの恋が実らないと、確定してしまったことに理解するのに、また時間がかかった。
「そう、なん、だ」
声がかすれた。涙すら出ない。
ただただ、信じたくない。それだけが胸の中でぐるぐると回っていた。
「一目ぼれでさ、声もかけられなくて、ずっと片思いしてたんだ」
まるで今の私のようだな、と使い物にならない頭が感じていた。
「かなうはずないって、思ってて、それで彼女と同じ高校に行きたくて、すごく勉強したんだ。
でも、それは結局無駄になっちゃんたんだけど。
中三の二月に、父さんの転勤が決まっちゃって、ここに引っ越すことになったんだ。
だから俺には時間があと一ヶ月も残されてなかった。
すごく焦ったよ。告白する気なんてなかったけど、もう彼女と会えないと思ったから。
でもそんなときに、卒業文集のクラスページを彼女と一緒にまとめることになったんだ。
放課後の教室に二人っきりだったから、すごく緊張したのを覚えてるよ。
その時に初めて彼女と会話らしい会話をして、初めて彼女に名前を呼んでもらって、すごく、嬉しかった。
やっぱり彼女が好きなんだな、諦めるなんて無理なんだな、って、思った。
でも結局告白はできなくて、そのまま帰る時間になっちゃってさ、やっぱしすごく焦っちゃって。
時間が止まればいいのに、なんて考えたりもしたかな。
そんなときに彼女がいきなり下を向いて、俺に言ったんだ。
引っ越しちゃうの?って。俺はうん、って答えるしかなかった。だって本当に引っ越してしまうから。
涙が出そうだったよ。どうしようもなかった。
そしたら彼女、いきなり驚かないで聞いてねって言いだしてさ、
俺に好きだ、って言ったんだ。
すごく、本当にすごくびっくりしたよ。嘘なんじゃないかって、何回も思った。
でもそれはまぎれもなく現実で、理解するのにすごく時間がかかったことを覚えてる。
だから俺も好きですって、彼女に言ったんだ。すごく声がかすれて情けなかったけどね。
彼女は驚いた顔をしてさ、そのあといったんだ。じゃあ私たち、両想いだね、って。
すごく、綺麗に笑ったんだ。本当にきれいに」
彼はゆっくりと時間をかけて、彼の思い出をしゃべっていた。
私はというと、涙を必死にこらえていた。残酷すぎる、と思った。
私だって、あなたがすきなのに。そう言えたら、いいのにな。
彼は無情にも続ける。彼にとって、悲劇すぎることを交えながら。

「でも彼女は、その次の日に交通事故で、しんじゃったんだ」





その日はなんだか先生たちも慌ただしく動いていた気がする。でも僕にとってそんなことはどうでもよくて。
彼女に早く会いたい。そう思っていた。
確かに変だった。いつもは早く来る彼女は遅くになっても来なくて、先生はいきなり一時間目を自習にした。
僕は変な違和感を覚えていたけど、何もないと思って無視していた。
それがいけなかったのか。
「在原蓮さんは、今日学校に行く途中に事故にあって、亡くなったそうです」
先生がそう言った瞬間に、僕の世界のすべてが音をたてて崩れた。





「え、?」
一瞬、彼が何を言ったのかわからなかった。しん、だ?
「彼女はその次の日に交通事故で亡くなった。居眠り運転だったんだって。
俺は、信じられなかったよ。というか、信じたくなかったし実感だってなかった」
彼はそう言って、辛そうに目を伏せた。
「それから俺は、どうやってあとの一ヶ月をすごしたのか覚えてない。
気づいたら引っ越してて、気づいたらこの高校に入学していた。
何もかもが頭に入らなかった。勉強も、先生が言ってることも、親の言ってることも、全部。
もう生きてるのかしんでるのか、自分でもわからなかった。
でも、時間が過ぎていくたびに、彼女の記憶が俺の中でうっすらと消えていってることに気がついたんだ。
すごく、怖かった。彼女を忘れてしまいそうで。すごくすごく、怖かった。
どうして俺をおいて死んじゃったんだろう、って何回も思った。そのくらい、辛かった」
彼はそう言って一息つくと、呆然としている私に向かって辛そうに、笑った。
私はその笑顔が悲しくて、悲しすぎて、泣いてしまった。
涙が溢れて止まらなかった。理由なんてわからない。どうしようもなく、悲しかった。
「東さんは、やさしいね」
「やさしくなんかっ、ないっ、よ」
涙でうまく言葉が言えない。
「やさしいよ。他人のこんな暗い話を聞いて、泣いてくれるんだからさ」
涙でもう、言葉が出ない私の頭をそう言って彼は撫でた。
その手が優しすぎて、もっと泣いてしまいそうになった。
彼は、やさしすぎるんだ。だからこんなにも、儚い。
「わたしっ、八代くんがっ、っず、すき、だよ」
いつのまにか、こんな言葉が出ていた。きっと、涙のせいだと思った。
もう当たって砕けてしまえと、思ったんだと思う。
だって私の悲しみなんて、彼の悲しみの足もとにもおよばないだろうから。
だから、言っておきたかった。三年生になる前に。
ぐずぐずと泣きながら言った私の言葉に驚いていたのか、そのあとしばらく彼はしゃべらなかった。
私は泣いたまま、彼の返答を待った。
「実を言うと、もう彼女とすごした記憶はほとんど、うすくなっているんだ。
それでも多分俺は、まだ彼女のことが好きだと思う」
残酷な言葉が胸に刺さった。
「でもさ、俺のこの話を聞いて泣いてくれた東さんなら、好きになれる気がする」
私は驚いて、顔をあげた。彼は、笑っていた。
そして彼は言う。
「こんな俺でよければ、付き合ってください」
「・・・はい」
涙を強引にシャツでぬぐって、彼を見た。
彼の心の傷はきっと、まだ癒えてはいない。
だからこそ、私は彼を愛そうと思ったのだ。こんな私で彼が救えるのなら、何でもしようと思った。





目の前にいる東さんの気持ちを、本当は知っていた。
だけれど彼女が忘れられなくて、そのままにしていた。
本当は今日、彼女を振ろうと思っていた。でも、彼女は泣いてくれたから。
在原さんの話を聞いて、しかも僕がその人をまだ好きだって知っていながら、彼女は告白してくれた。
それだけで、十分だ。僕がこの人を大切に思うには。
だから、僕はこの人を幸せにしようと思った。


◇◆


私は今、一生分の恋をしている。
僕は今、一生分の恋をしている。


そしてその恋は、まだはじまったばかりだ。

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