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2010.06.07(Mon)


きみはうつくしい


世界はこんなにも晴々としているのに私だけは暗い気持ちで歩いていた。
誰もかれも信用してたまるか。そんな風に考えて、次の瞬間くだらないな、と笑ってしまう。
才能のある人間に嫉妬したのはこれが初めてではないけれど、今回ばかりはひどかった。
なおかつそんな人間を好きだなんて思っているところが救いようがないんだと思う。
でも彼は平凡すぎる私のことなど知らない。ただ私が勝手に彼に恋をして、勝手にその才能に嫉妬しているだけだ。
もともと音楽が好きだった。歌うことは苦手だったけれど、ピアノは大好きだった。
小学生の頃は周りにピアノを弾く人間があまりおらず、ピアノを弾くだけで褒められるなんてしょっちゅうだった。
しかし中学にあがり、私は自分のピアノの技量に疑問を持ち始めた。私は本当にピアノが上手なのだろうか。
そして高校。元から才能もないくせに音楽科のある高校に無理して入り、このざまである。

「才能なんてもともとなかったんだな」

吐き捨ててしまえばそんな簡単な言葉で終わってしまう。
うすうす感づいてはいたのだ。ただ、それを認めたくなかっただけで。
ピアノが大好きだった自分を自分で殺してしまった。残ったのは惨めな自分だけ。
彼のすべらかな演奏が頭の中でエンドレスリピートされる。嗚呼、憂鬱だ。
私だってあれくらい弾ければ、そう考えてばかみたいだなと笑う。
彼は完璧人間だ。私の付け入る隙などない。
頭がよくて、ピアノは天才的で、運動だってそこそこできて、なおかつ顔が綺麗。
どこのマンガのキャラだろうか、と突っ込みの入れたくなるような人間。それが彼だ。
普通なら彼のような人間、私は毛嫌いするはずなのに、どうしてか今回だけは違ってしまった。
それはきっと一目ぼれしてしまったからだと思う。顔にも演奏にも。
あんなにまで理想的な人間がいたのかと、最初は本当に思った。美し過ぎる人間だと思った。
だけれど、それも最初だけだ。
彼はその顔の綺麗なところと天才的な演奏力が手伝って、あっという間に私の手の届かないところへ行ってしまった。
そして私はというと、彼とは正反対に教師たちにお前の演奏は小学生レベルだと批判されるばかり。
努力はしてきたつもりだった。だけれど、そんなの誰も知らないし分かろうともしてくれない。
結局は結果だけが全て。残酷すぎる現実に私は失望し、絶望した。
手に持っているショパンの楽譜をぐしゃぐしゃにして捨ててしまいたい気分だ。
ついさっき教師に言われた言葉が耳を離れない。

「才能もないくせにショパンなんて弾くな」

教師の嫌味な視線とともに深く深く突き刺さった言葉。
今思いだしただけでも眩暈がするほどにショックだった言葉。
私はショパンの曲が好きなだけなのに。好きなだけではだめなのだろうか?
それとも、才能がないとピアノを弾いてはいけないのだろうか。
もう意味が分からない。考えることを放棄したい。
いっそのこと消えてなくなりたい。私の存在全て。
私ごときが消えたって誰も困りはしないだろう。家族は私のことなんて見ていない。なんでもできる姉しか見てない。
なんでこんなに報われない世界に生まれたのだろう。今更後悔してみせる。
けど、そんなことしたって救われるわけじゃないんだ。分かってる。分かってるんだ。
こんな時、話を聞いてくれる親友とか、恋人とかがいれば私はまだ救われるんだろう。
しかし残念ながら、私にそんなものはいない。この学校でだって友達と呼べる人間は誰ひとりとしていない。
知り合い程度なら、いるけれど。たったそれだけなのである。
どうしようもなく空しくなってきた。涙さえ出ない。

「ははっ、」

なんだかおかしくなって、笑いがこみあげた。
無理して笑ってるだけなのかもしれないけれど。とにかくこうでもしないと本当に死んでしまいそうだった。
それとも、もう死んでしまおうか。死んで全てをリセットしてしまうか?
ああでも駄目だな。私にそんな度胸も勇気もない。弱虫でチキンな私はこうやって空しく生きるしかないのだ。
惨めに才能のある人間を羨むしかないのだ。
今なら胸を張って言える。最悪な人生だ。

ぽろん、

ふと、ピアノの旋律が聞こえた。私は足を止めそうになって、また変な笑いがこみあげてきた。
まだ私はピアノに執着しているのか。ばかみたいだ。才能ないって、弾くなって言われたばかりなのに。
なのにどうしてこんなに悲しくなるんだろう。どうしてこんなに涙があふれるんだろう。
ショパンの楽譜に涙の染みが出来るのを見て、私は笑うしかなかった。

「ははっ、はははっ、はーっ・・・・」

ああもう、どうしようもない。私の全てがピアノで支配されていたなんて今に知ったこっちゃない。
なのに、なのに、どうしてこんなにも切ないんだろうか。
誰でもいいから国語の苦手な私にもわかりやすく教えてほしい。
廊下のど真ん中で私はみっともなく嗚咽を吐き出しながら泣いた。
皮肉なことに、聞こえてきたピアノ旋律はショパンの別れの歌だった。皮肉にも程がある。
しかも無駄に演奏が上手くって余計に惨めになった。けれど、聞き入ってしまう自分もいた。
美しい音色。乱れないリズム。そのどれもが完璧で、私にはないものばかりで、まぶしいなと感じる。
その時、完璧だった演奏が止んだ。そして代わりに強引にドアを開く音が聞こえた。


(前篇です)
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